2009年11月25日水曜日

ARTing No. 3 原稿 ねこびリターンズ

ARTing 原稿 2009.11.16


展覧会名称:「ねこびリターンズ」
会期:平成22年(2010年)1月8日(金)〜31日(日) 金土日月のみ
 14時〜19時 ※火水木休み
主催:オハツ企画
会場:ART BASE 88(アート・ベース88)
 〒810-0041 福岡市中央区大名1-14-28 第1松村ビル 紺屋2023 #306
 電話fax 092-986-4888
 HP http://ohazkikaku.blogspot.com/

企画者によるメッセージ文
 「ねこびリターンズ」は、2007年春に冷泉荘で開催された「ねこび」の第2回展で、寅年に引っかけ2010年年頭に開催します。これはオハツ企画が主催する無審査公募(アンデパンダン)企画展で、ねこに限らず動物ネタ全般をテーマにします。
 そもそも無審査公募を始めたのは、(1)アーティストが自分の描きたいように描く展覧会がしてみたかった。(2)コンテンポラリーアートではメジャーではないテーマにしたかった。(3)見たことない作家に出会う場を作りたかった。そしてもうひとつ、(4)作品を売買し、作家を直接支援する場にしたかった。ということなのです。
 今回もおなじみ、ゆるめの会場構成予定〜コタツに入って作品鑑賞しながら、ねこ関連本などをぱらぱら眺め、ちょっとひといき休みましょう、でも実は次の手を虎視眈々と…、そんな感じで計画中です。(最新情報はブログからどうぞ)
 ※ちなみに私は猫マニアではありません。

宮本 初音(みやもと・はつね):ART BASE 88/オハツ企画代表

★参考写真
「ねこび」会場風景 2007年 冷泉荘 A32 アート・アパート88にて

2009年11月24日火曜日

2009年九州アート回顧 新美術新聞 2009.11.23

ネット公開2010.01.06
新美術新聞に掲載された元原稿です。


2009年11月 新美術新聞 2009年12月11・21日合併号 7面
 2009年の九州アート状況を振り返る
 作り手の交流が新しい活動を作り出す

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原稿送付 2009.11.23

※写真クレジット
撮影:久保貴史 
(C)別府現代芸術フェスティバル2009実行委員会

作家名:マイケル・リン
作品タイトル:別府 04.11-06.14.09
会場:別府国際観光港関西汽船のりば2階

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新美術新聞 2009.11.23「2009年の九州アート状況を振り返る」
宮本 初音(アート・コーディネーター、ART BASE 88/西天神芸術センター 代表)

 2009年九州で注目を集めたのは、温泉で名高い大分県別府市でおこなわれた別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」(4/11-6/14)であった。美術作家・山出淳也が国際芸術祭を開催する目的でNPOを立ち上げ、数年がかりで実現にこぎつけた。レトロな市街地や湯けむりの温泉街など別府の特徴的な地域を会場に、現代美術・コンテンポラリーダンス・音楽ライブなどをおこない、会期中は延べ200人を超す芸術家が別府に集った。行政や企業と協働し、国際交流を進める活動力は、地方では稀なことである。今後3年ごとの大規模事業と毎年の小規模イベントが計画されている。
 福岡では、この秋、福岡市美術館開館30周年記念「コレクション/コネクション」展(8/8-9/27)、福岡アジア美術館開館10周年記念「第4回福岡アジア美術トリエンナーレ2009」展(9/5-11/23)という二大記念展が開催され、同時期に福岡県立美術館で「大原美術館コレクション展」(10/10-11/29)、北九州国際ビエンナーレ2009「移民」(10/10-11/15)もあり、例年以上の「アートラッシュ」となった。にも関わらず、街全体をフェスティバル化できなかったのは美術館運営の状況が響いており、極めて残念な事態である。政府の事業仕分けの状況から今後さらに深刻になりかねない。
 その一方で、各地で若手作家達を軸にした活動が目立ってきている。熊本の、再生された問屋街地区での「河原町アートの日」(毎月第2日曜開催)や、佐賀大学学生が商店街を舞台に企画した「呉福万博」(9/5-9/22)、長崎・波佐見町の陶器工場跡を使ったアートスペース「モンネポルト」などである。これらの活動に、前述の別府フェスに関わった若手作家らが絡んでおり、その波は九州内だけでなく全国的に連動しつつある。
 作り手の交流が新しい活動を作り出す、九州のアートは新しい局面を迎えようとしている。

第4回福岡アジア美術トリエンナーレ2009 レビュー 台湾「藝術家」誌 2009/9月

台湾の「美術手帖」と称される<藝術家>誌にFT4のレビューを書きました。
(2009.9.12)

藝術家(Artist)413号 October 2009
p.140-145
共再生−為明日創造
第四届福岡亞州藝術三年展

日本語の元原稿です、誌面では中国語になっています
※引用等は「藝術家」誌を参照ください(アジ美図書室にあると思います)
※写真はFT4実行委員会とモマ・コンテンポラリーに提供してもらいました
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「芸術家」誌 FT4レビュー 2000字 2009.09.12 宮本初音


「第4回福岡アジア美術トリエンナーレ2009」(以下FT4)が9月5日に開幕した。アジア21の国と地域から43組のアジア作家が集う、福岡最大規模の現代アートフェスティバルであり、今回は福岡アジア美術館の開館10周年記念展ともなっている。テーマは「共再生—明日をつくるために」。「共生」と「再生」を合わせてつくられた造語である。

前身となる福岡アジア美術展(5年ごとに開催)は、30年前に福岡市美術館で開館記念展としてスタートした。困難を伴いながらも丹念に進められた現地調査をもとに開催にこぎつけたが、当時は「アジアに現代アートはない」などといわれのない非難を受けたりもしたという(FT4図録より)。批判や予算減にも負けず、着実な現地調査とアジア美術の企画展を積み重ねたことが、アジア美術館の開館を導き、さらにそこから10年が経った。この間のアジアアートをめぐる状況の変化はめまぐるしいものがある。ことにアジア美術館が開館したのちの10年は、チャイナ系アートの躍進、それにともなうマーケットの拡大が著しい。すでにアジアのアートは現地で発掘してくるものではなく、次に高値で取引されるものを探り出し、世界のマーケットを牽引する時代に突入している。
しかしFT4は、そういったアートマーケットを意識した作品を慎重に意図的に避け、これからの成長が期待される新進作家と、ゆるぎない実力を示す国際作家に焦点をあてた作家選考をした。ふたを開けて見れば、アジア美術のスターが勢揃いした粒ぞろいの作品がひしめく展示会場となった。

まず、美術館に入る前から1Fのエントランスでジャン・リーロイ・ニュー (Jan Leeroy C. New) の作品が待ち受けている。会場に入れば、ホァン・ヨンピン(Huang Yon Pin)大きな蛇の骨が度肝を抜く。2008年北京オリンピック開会式のアートディレクションもおこなったツァイ・グォチャン(蔡國強 Cai Guo-Chiang)の水墨画的な大作は、じっくり見入る観客が多い。電灯を使ったヤオ・ジョンハン(姚仲涵 Yao Chung-han)のインスタレーションや、動きがユーモラスなポース&ラオ(Pors & Rao)の作品が人気を集めている。重いテーマを扱いながら、映像を交えた巧みな構成で惹きつけるのは、ヤスミン・コビール & ロニ・アフメッド(Yasmine Kabir & Ronni Ahmmed)のインスタレーション「葬儀」。創作漢字作品で知られるシュ・ビン(Xu Bing 徐冰)は、文字をモチーフに森を作り出すという新たなプロジェクトを展開し、世界各国でワークショップがおこなえるような教科書を作り出している。カフェに隣接した広いラウンジスペースでは、淺井裕介が会期に先んじて現地制作をおこない、泥絵の技法で大作を描いている。

館内各作品はどれも見応えがあるが、今回は館外でも作品展示が実施されている。ユニット「ポスト・ミュージアム」(Post Museum)は美術館と市内のギャラリーの2カ所を使った「無料マーケット」と題したプロジェクトを展開、スカイプでつなぎながらワークショップをおこなったりもしている。
美術館から徒歩5分程度のところにあるリノベーションアパート「冷泉荘」では館外の正式会場として、6組の作家が展示をおこなっている。中でも日中韓の作家ユニット「西京人」(小沢剛、チェン・シャオション(陳劭雄)、キムホンソク/ Xijing Men (Ozawa Tsuyoshi, Chen Shaoxiong, Gimhongsok))による、架空の「西京国」を巡る作品は若い世代に大きな支持を得たようだ。

今回のFT4は、もともと、美術館を出てまちのなかでもっと多くのプロジェクトが想定されていたようである。初日にリアン・セコン(Leang Seckon)が美術館正面の商店街でパレード「踊るマカラ in 福岡」をおこなったが、実際には館外イベントがさほど多いとは言い難い。
そんななか、FT4と合わせ市中のギャラリーで個展をおこない、伝統ある神社に自作の絵馬を奉納したマイケル・リンの多彩な活動は注目を集めた。(個展と絵馬奉納のコーディネートはモマ・コンテンポラリーによる)

福岡ではもともと他都市に比べ、公立の美術館と民間ギャラリーやNPOが連携する例が少なくなかったが、最近はやや機会が減じているようである。アーティストが新しい表現を探しているときに、さまざまな立場の人が関わりやすいのは福岡の都市規模の利点である。これを活用しないのは大変に惜しい。

FTは「福岡トリエンナーレ」と読む。しかしながら、地元では「アジトリ」と略されることが多い。つまり、アジアの作家がやってくる展覧会であって、地元を盛り上げるトリエンナーレである、という風には受け止められていない。今回は特に、10周年というメモリアルな回であるのに、福岡の地元作家が参加していないということも影響している。地元作家の現場とFT4の現場に温度差があることは否めない。
アジア美術を巡る同美術館の歴史的な積み重ね、現在のアジア各地とのネットワークを、地元作家がしっかりと受け止め、FT開催を含めこの土地のアートを考えてゆくこと。アート以外の地元活力を繋いで作品や展覧会を積み上げてゆくこと。実はそれが今回のテーマである「共に生き、再生する」ということに繋がってゆくのではないだろうか。

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福岡アジア美術館 開館10周年記念
第4回 福岡アジア美術トリエンナーレ 2009
共再生―明日をつくるために
LIVE and LET LIVE: Creators of Tomorrow

会期
2009年9月5日(土)~11月23日(月・祝)
水曜休館 ※ただし9月23日(水・祝)は開館し、翌24日(木)休館
福岡アジア美術館(主会場):午前10時~午後8時(入場は午後7時30分まで)
冷泉荘(別会場):午前12時~午後6時

会場
福岡アジア美術館全館、周辺地域

公式サイト
日本語 http://www.ft2009.org/jpn/index.html
英語 http://www.ft2009.org/en/index.html
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宮本初音 Miyamoto Hatsune
(ART BASE 88 主宰、ミュージアム・シティ・プロジェクト事務局長)