2013年2月10日日曜日

WATAGATAアーツフェスティバル2012 図録テキスト [2013.2.10公開]

公開 2013 02 10
脱稿 2012 11 11

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  福岡と釜山のアーティストが「行ったり来たり(韓国語でワッタガッタ)」する企画も3年目となった。年に1度のアーツフェスティバルは2011年秋の福岡 での開催に続き、2012年は釜山で開催された。今回、日本からは福岡だけでなく九州内の宮崎、熊本からアーティストが参加した。合計14組のうち2組は パフォーマンスで参加となった。また、福岡県内10組のうち、北九州直方エリアから4組が参加した。これは北九州空港や下関港の釜山との行き来に関する利 便性、つまり昔から人やモノの行き来が多く馴染みやすいこと、移動に日数や経費負担が少なくて済むことが大きく影響している。釜山は九州からだと本当に近 い土地なのである。

  2012年6月に福岡アジア美術館のカフェ (FAAM CAFE) でおこなった説明会では50人を超す参加者が集まり、釜山から来た関係者の言葉に集中する九州のアーティストたちは希望と期待に溢れていた。その後14組 が作品プランを提出し、釜山側は会議の末、当初の予定や予算を超え、意欲あるアーティスト全員に発表の場を作ることを工夫してくれた。「結果的に全員参加 だからキュレーターが不在」というのではなく、ひとりひとりのプランを見てチャンスを作ってくれた釜山事務局に深く感謝したい。

  そして、近いとはいえ海外で、ほぼ2週間の滞在制作をおこなった九州のアーティストたちを私はたいへん誇りに思う。絵具の色味が違う、デジタル機器の接続 が違う、刺身のわさびの味が違う、歴史の認識が違う、政治への姿勢が違う、アーティストへのサポート体制が異なるなかでの制作であった。現時点で問題は 様々にあるが、若い同世代のアーティストたちがお互いの仕事現場を繰り返し共有していくことで、生まれ始めた感情やアイデアがあり、この先に開く芽がある と信じている。この、海峡を挟んだ、双方の場所ならではの新しい表現が生まれて来ること、「中央的」な文脈とは異なる有り様を目の当たりにしたいと願い、 次の計画を構想しているところである。

福岡大名にて。2012年11月

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